惑星「水中花」

この星の季節は三つ。

紺、深緑、灰色。

一日もまた、灰色にけぶる朝、菫色の太陽が輝いて来ると空は惑星を覆う水の暈を通して青色に変わり、午後の日差しは緑の植物を輝かせ、やがてまた灰色に暮れなずむ。

ブルー、グリーン、グレー

大気はガラスのように冷たくて重い。

水のように透き通り、冷たくて重い。

空は決して晴れることはないが、水の傘を通してとても明るい。

雨季は涼しい熱帯雨林だ。暗いジャングルの茂みに咲く花は乾季よりずっと色が濃くなり、ピンクがマゼンタやフューシャになり、黄色がオレンジや朱色になる。


山間部は濃い青と緑、しかし都市もまたそれらの青と緑の影が映り込んで、藍色と海松色と銀灰色にけぶる光に彩られていた。

都市は主に入植者がもたらしたガラスとステンレスで造られており旧市街は耐水性の漆喰で造られた伝統的な民家と金無垢の寺院の尖塔がうっすらと雨に煙っていた。

湿度200%の星。


最初の入植者はこの星で獲れる魚介類の食材に惹かれてやってきた。

しかし大きなオレンジの魚の切り身に感激した訪問者は一番大人しそうに見えた白いスパイスソースをかけてむしゃぶりついたところ、たまたまそれが致死量を超えるこの星名産の刺激物であった為に、激しい咳と共にひっくり返り、AED蘇生騒ぎとなった。




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